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資金の問題から新築をあきらめ、両親の実家をリフォームして住むことにした30代の夫婦は、交渉の鉄則である「あいみつ」を取りませんでした。
客観的に見て、妥当な線とは言い難い見積もりで契約したのは、夫婦揃って駆け引きが苦手で、性格的に呑気だからです。
お金がないならそれなりに安く、しかしできるだけ質の良い仕上がりを求めて交渉するのが一般的な発想だとしたら、呑気なこの夫婦は業者にとって扱いやすいお客様です。うっかりカモになる可能性もあったでしょう。
ところが結果は双方が大満足でした。うるさく値切ったり細かいクレームをつけたりしないのは、苦手な駆け引きでストレスを溜めながら金額にこだわるより、とにかく自分たちが望む家をちゃんと造って欲しいという純粋な気持ちからです。
夫婦仲の良さに感心した業者は、夫婦の最優先事項を的確に察知したわけです。業者は、この夫婦が練った設計プランの実現に全力投球することで「良心的なお客様」の要望に応えました。
思い描いていたリフォームが完成したので、夫婦はもちろん大喜びです。引渡しの際に担当者が、「僕たちもお二人を見習って家庭を大事にしようと思います」と夫婦に握手を求めたという話を聞き、交渉は必ずしもセオリー通りのテクニックがものをいう世界ではないと痛感しました。
「説得」 → 「納得」 → 「商談成立」
が交渉の基本だと言われます。お互いの利害が一致する落とし所を探る作業が交渉です。
では「利害」とは何か。1500万円のポルシェを現金で買ったある男性は言います。
「A社とB社の2社から話を聞いた。最終的にはA社のほうが高い値引率を提示してきたが、人の足元を見るようにちょっとずつ値引いていく感じが、せこかった。でもB社は、一気にギリギリまで値引いてきた。その潔さを信用してB社で買った。」
手の内を徐々に明かすのは、交渉の常套(じょうとう)手段かも知れません。
しかし、必ずしも金額面だけが「利害」ではないということです。
●過去の記事はこちら
>>> 『お客様との間に架ける橋』
>>> 『努力と徒労』

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